これだけは知っておきたい日本酒造りに欠かせない「酵母」を徹底解説

日本酒を造りに欠かせないのが、「酵母」です。酒屋さんや飲食店で、少し日本酒の話が深まってくると「きょうかい酵母7号」などの具体的な酵母の話が出てきて、ちょっと引目を感じてしまうこともあります。(筆者自身がそうでした…)そこで、今回は、日本酒造りに欠かせない「酵母」を簡単に解説しつつ、代表的な酵母の特徴(味や香りを含む)をご紹介します!




日本酒造りに欠かせない酵母とは?

日本酒造りの流れ

日本酒は、「並行複発酵」と呼ばれる「解糖」と「アルコール発酵」を同時に行います。

「解糖」とは、お米に含まれている「デンプン」を「麹」の力を使って、ぶどう糖(グルコース)に変化させます。そして、この糖を、今回のテーマである「酵母」を使って、アルコール発酵を行い、アルコールを醸していきます。

日本酒造りに欠かせない酵母の正体

酵母とは、真菌類に属する単細胞生物です。簡単に言ってしまうとカビの仲間ですね。形は、楕円形をしていて、サイズは、5μ(ミクロン)〜10μ程度と言われています。ちなみに、1μ=0.001mmです。なので、肉眼では、見られません。

酵母は、皆さんもご存知の通り、日本酒以外にも、ワインやビールそしてパンにも利用されていて、太古の昔から人間の生活に欠かせない細菌でした。

この酵母が、アルコール発酵を行うという発見をしたのが、明治時代の細菌学者であるフランスのパスツールでした。おそらく、このパスツールが「酵母(イースト菌)」の存在を発見していなかったら、現在のような日本酒には巡り逢えていないかもしれません。

そんな酵母は、単細胞生物でありながらも、植物に見られる「細胞壁」や「細胞膜」、「ミトコンドリア」そして、「核」などがあり、「核」には、人間のように染色体があります。

この核に存在している染色体の数は、16本で、これまでにDNAの解読にも成功してきました。清酒に使われる酵母である「清酒酵母」には、様々な種類がありますが、それらのDNAの99%程度は、同様の塩基配列をしていると言われています。しかし、残りの1%は異なっており、この1%が出来た日本酒の香りや味わいの決定要因の一つになっています。これは、人間の遺伝子にも似ています。たった遺伝子の違いとなっている1%がその人の個性を決めているように。

清酒酵母の増殖

清酒酵母の増殖は主に、出芽することで行われます。出芽する前の「母細胞」から出芽して、母細胞に「娘細胞」が芽を出します。この娘細胞が芽を出して、増殖していきます。

この増殖は、無限に続くことはなく、1mL(1cc)あたりの醪で、約1〜2億個程度で止まります。

清酒酵母が起こす「アルコール発酵」

先ほどもご紹介しましたが、清酒酵母は、ぶどう糖をアルコールに変える「アルコール発酵」を行います。では、ぶどう糖からどのようにアルコールを生み出すのでしょうか?

麹を使ってお米のデンプンは、「ぶどう糖」に分解されました。そこで、酵母を加えることで、「解糖」というプロセスを辿ります。

まず、ぶどう糖は、「果糖(フルクトス)」という成分を経て、「エノールピルビン酸」に姿を変え、最終的に、「ピルビン酸」へと変貌します。

このピルビン酸は、ある条件のもとで、アルコール発酵を行っていきます。それは、酸素が不足している状態です。この状態で、ピルビン酸がアルコールへと変貌していきます。ピルビン酸は、最初に炭酸ガスを生成しながら、アセトアルデヒドに変わり、その後、エチルアルコールになります。

そして、このピルビン酸〜エチルアルコールへの過程で生じる「炭酸ガス」と「エチルアルコール」が吟醸香が強いかどうかを決めるポイントになります。この炭酸ガスとエチルアルコールの成分には、吟醸香のもととなる「カプロン酸エチル」 と「酢酸イソアミル」が含まれています。

カプロン酸エチルは、デンプンを解糖した糖から生じ、酢酸イソアミルはアミノ酸から生成されます。この二つの香りは、下記のような特徴を持ちます。

カプロン酸エチル:メロンやりんごのような香り
酢酸イソアミル:バナナのような香り

酢酸イソアミルの生成を助ける「精米」

酢酸イソアミルを邪魔する成分があります。それは、「脂肪酸」です。この脂肪酸は、お米に含まれており、収穫時期から時間が経てば経つほど、この脂肪酸の量が増加していきます。そのため、精米することで、酢酸イソアミルを作るのを邪魔する「脂肪酸」を減らすことが出来ます。

いろいろな酵母の種類

日本酒を造るための清酒酵母には、大きく分けると3種類あります。

清酒酵母の3つの分類・きょうかい酵母:日本醸造協会から提供されている清酒酵母
・地方自治体酵母:各自治体を中心として開発された清酒酵母
・蔵つき酵母:蔵元の酒蔵などに存在している酵母

では、それぞれの代表的な清酒酵母とその特徴について、ご紹介します!

きょうかい酵母(清酒用)

きょうかい酵母

(引用:日本醸造協会

きょうかい酵母は、主に、「泡あり酵母」と「泡なし酵母」に分けられます。「泡あり」と「泡なし」の「泡」とは、アルコール発酵の過程で、清酒の醪の表面に出る気泡です。この泡の体積は、非常に大きくなり、仕込みタンクから溢れてしまうとアルコール発酵が遅れる可能性があり、酒質に関わります。

余談ではありますが、この「泡」は、遺伝子分析から清酒醸造用の酵母にしか見られないとされています。

「泡あり酵母」には、6種類あります。

種類特 徴
6号日本醸造協会が提供する最古の酵母。別名:新政酵母
アルコール発酵が非常に強い。香りは穏やかで、スッキリとした味わい。
7号長野県の「真澄」の醪による酵母。
アルコール発酵が強く、吟醸香もしっかりとしている。
以前は、吟醸酒に多く使われていたが、最近では、普通酒の醸造に生かされることが多い。
9号吟醸香がしっかりしていて、酸が少ないことから「吟醸酒」に向いているとされる。
9号酵母から派生した酵母も存在している。
また、ワインにも使われることも稀だがある。
10号明利酒類で分離された酵母とされているが他の酒蔵でも10号酵母の発祥を唱えている。
こちらも酸が少なく、吟醸香も引き立つことから吟醸酒はもちろん、純米酒にも利用されている。
11号アルコール耐性の強い酵母。酸はやや強く、キレが良いお酒に向く。
淡麗辛口のお酒を造るのに良いとされています。
14号酸が少なく、繊細な味を生み出す酵母。吟醸酒に向くとされています。

また、「泡なし酵母」は、上記の6酒類に加えて、1501号酵母(秋田流・花酵母AK-1)があります。この酵母は、吟醸香がよく出るのが特徴で、味わいは、後味がスッキリした日本酒を作ります。

地方自治体酵母

日本酒も地産地消の流れになってきており、酒米の生産だけでなく、酵母も地方自治体などが中心となって、開発・改良されています。特に、東北地方を中心に各県で、清酒酵母の開発が盛んに行われています。

そのため、各県の銘柄米や好適酒造米を用いた酵母も作られており、今後もその開発・改良は進んでいくと考えられています。

蔵つき酵母

きょうかい酵母の提供がある以前は、酒蔵に住みついていた酵母を用いて、酒造りが行われていました。現在でも、一部の日本酒で、蔵つき酵母を使って醸造されているものがあります。

最後に

清酒酵母については、遺伝子分析をはじめ、たくさんの情報やデータがあります。ぜひ、好きな日本酒を見つけて、酵母を調べてみてはいかがでしょうか?

 

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