「公務員志望」から「お酒のトータルコディネーター」に転身 リカーショップサトウ4代目佐藤栄介
茨城県土浦市にある「リカーショップサトウ」の4代目の佐藤栄介さんに取材させていただきました。今回は、酒販店「リカーショップサトウ」を通じて学んだ佐藤栄介さんの「プロとして考えたお酒の面白さ」についてお話していただきました。
26歳と若くて、バイタリティーのある佐藤さんですが、お酒の面白さや魅力をお客様に伝えるまでに、いくつもの課題や壁がありました。それを乗り越えて、新たな挑戦に挑む彼の言葉は、正直「26歳⁈」と思えるくらい、思想が豊かで、「今」を大事にするからこその吸収力があるように感じました。そんな彼に、「苦境にあったリカーショップサトウに入社した思いとその後の奮闘」について、取材させていただきました。
「ビール」から「日本酒」中心の店づくりにシフトした「リカーショップサトウ」
(左:佐藤栄介さん、右:SAKERECO担当者)
SAKE RECO:お忙しいところ、お時間を取っていただきまして、ありがとうございます。佐藤さんは、リカーショップサトウでお酒のお仕事に携わって、どれくらいなのでしょうか?
佐藤さん:今年で、「6年目」になります。最初の4年間は、「ガムシャラ」に取り組みました。「面白いこと」・「やりたいこと」・「伝えたいこと」はやれるだけやりました!「現状がこうだから」という固定概念にとらわれず、とにかく必死に(笑)そしたら、少しずつ周りや自社の状況がわかってきて、意図的に色々な取り組みを行えるようになってきたのが、「今」ですね。
SAKE RECO:「やれるだけやりました!」と明言できるなんてすごいですね!そしたら、まず「今」に至るまでの「リカーショップ」の歴史を教えてもらえますか?
佐藤さん:リカーショップサトウを運営しているのが、有限会社サトウです。その創業は、昭和23年になります。創業者の佐藤豊一郎は、軍医として医療を担っていた満州から引き上げてきた後、医療、飴、牛、酒の商売をするようになり、今の酒類販売に力を入れたと聞いています。そして、私が生まれた年、今から26年前に、現在の「さん・あぴお」の場所に「リカーショップサトウ」として出店しました。出店当初は、活気あるショッピングセンターで、多くの人が来店されていました。その時は、日本酒は置いてはいたものの、メインは「ビール」でした。ですので、当時の売上の約6〜7割が、「ビール」が占めていましたね。
(リカーショップサトウカウンター前の写真)
SAKE RECO:リカーショップサトウを出店してからは、継続的に、多くのお客様がお酒を購入しに来られたんですか?
佐藤さん:それもそう長くは続かなかったんです。2000年の「長崎屋」破綻から大きく流れが変わります。このショッピングセンターのキーテナントになっていたのが、「長崎屋」だったんです。その当時、1階のフロアーは、長崎屋の食料品売り場、2階の半分は、長崎屋が運営するショップと、それらがなくなったことで、「シャッター通り」のようになりました。それだけでなく、当時、組合に加盟していた店舗の多くも撤退したので、一気にお客様もお店の数も減ってしまい、経営的にも厳しい状況に陥りました。
(リカーショップサトウ日本酒の冷蔵庫前の写真)
子供だった私は、その状況が、かなりショックで…。普段からよくお店にいたので、人が減っていくのが、とても寂しかったです。そういう状況にあって、両親の顔色を伺うことも多々あったように思います。10年近くそういった状況だったかなと思います。
SAKE RECO:ということは、その後、何か変化の兆しがあったということですか?
佐藤さん:危機的状況がすぐに改善された訳ではないのですが、2012年秋頃に、私が、リカーショップサトウで働くようになります。そして、日本酒を中心に据えたお店づくりにシフトして行きました。
「公務員志望」が「酒のプロ」へ
SAKE RECO:では、栄介さんがリカーショップサトウで働き始めるきっかけを教えてください。
佐藤さん:酒屋業には、全く興味はありませんでした。その理由は、父である社長からは常々、「うちは継ぐな!公務員になれ!」と言われていたので、私も「公務員になるもの」と思い込んでいました。ですので、入学した東洋大学までの1時間半の通学途中は、公務員試験のテキストを開いて、勉強していたくらい、本気で公務員試験を受験しようと考えていました。
そんな私が、「公務員になる」ことに疑問を持ちました。2012年7月12日の私の誕生日の出来事なんですが、誰かに祝ってもらうどころか、バイト先の居酒屋で、寂しく働いていたときの話です(笑)その日は、平日ということもあって、お店にお客さんがほぼいなくて、ずっと皿洗いしていたんです。ふと、皿洗いをしながら、「俺にとって、『本当にやりたいこと』って何だろう?」って考え始めたんですね。その時から、大学でも、友達にノートを貸すくらいだったのに、公務員試験の勉強するどころか、何をする気にならず、意欲が無くなってしまいました…。そして、引きこもりがちに…。
その時の生活は、荒んでたと思います…。大学が終わって地元に帰ってきた友達に誘われて、カラオケでオールして、朝帰り…。その繰り返し。遊んではいるものの、心の中では、「面白くないな…。」と。そんなときに、両親も「栄介、ちょっとおかしいぞ」と気づいて、「暇なら、店手伝え」と言われ、お店に出るようになりました。お恥ずかしいのですが、これが、リカーショップサトウで働き始めたきっかけです。
SAKE RECO:そんなご経験があったんですね。引きこもりがちな生活からお店に出るようになって、すぐに仕事には慣れましたか?
佐藤さん:そうですね、幼少期から仕事を見ていたので、レジ打ちや簡単な業務は、比較的、早く仕事は覚えられました。お酒の説明は、知識や経験がなかったので、社長や母に任せました。ただ、自分で説明したかったので、少しずつ「日本酒」について勉強するようになりました。社長や母に、「日本酒教えて欲しい」と言えなかったので、「日本酒」の本で勉強したり、「日本酒」を買って飲んだりしました。その時ですね、「あっ、これかもしれない」と直感的に思ったのは。そこから、「言葉を使って、説明する和酒の魅力」を感じるようになりました。
でも、実際は、お店に出始めたころは、お酒の説明には、苦戦しました。飲んだことのある銘柄が数十程度しかなかったので、提案できるお酒の幅が狭くて…。なので、「何かおすすめの日本酒ありますか?」と聞かれて、自分のおすすめのお酒を説明し尽くした後に、お客様から「他にありますか?」と聞かれると、提案に困ったり、説明に時間がかかったりしました。それから、お酒の味に対する「主観の幅」を広げようと、色々な銘柄を継続的に飲んでみるようにしました。
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