心を癒してくれるのにベストな日本酒は?
お酒には「気持ちが落ち着く」などのメンタルにいい影響があるということで、「ストレス発散」で飲む人も多いと思います。そこで、今回は、「ストレス」や「不安」を解消に導いてくれる日本酒の種類をご紹介します。「ストレスフルな時」と「将来の不安で頭がいっぱいな時」で、日本酒を飲み分けてみてはいかがでしょうか?
様々なお酒にリラックス効果
これまでに、ウィスキーやビールの成分に、リラックス効果があることが確認されてきました。例えば、ウィスキーに含まれる香気成分が、ストレス抑制作用があったり、ビールに含まれる香気成分にも、同様の効果が見られました。
そこに共通しているのが、「GABA」の存在です。GABAとは、興奮を抑えて、精神の不安定な状態を緩和してくれる成分(アミノ酸)で、主に脳や脊髄で機能を発揮しています。これによって、「リラックス」できたり、「興奮を抑える」ことができたりします。
最近では、このGABAを配合したチョコレートなどがコンビニなどでも購入できるようになりましたが、ストレスフルな現代社会で、今非常に注目されている成分の一つです。
このGABAが働くには、GABA受容体にGABAが結合する必要があります。また、最近では、GABA以外の成分もGABA受容体に反応することがわかってきており、今後の機能性食品の幅が広がることも期待されています。
GABAの効果
1.精神安定作用
「Plasma GABA in mood disorder」では、精神が不安定な人は、血漿中のGABA濃度が健常者に比べて、減少していることがわかっています。そのため、GABAの摂取により、精神安定が図られる効果が得やすいとされています。
また、健常者であっても、特に、女性は、加齢により、脳や脊髄液のGABA濃度が低下していくことも明らかにされています。(Free and conjugated GABA in human cerebrospinal fluid: Effect of degenerative neurologic diseases and isoniazid)
2.血圧降下作用
GABAがGABAb受容体と結合することにより、ノルアドレナリンの分泌を抑制し、特に、血圧が高い人に血圧降下作用があることが確認されています。
このように、GABAには、リラックスしたり、血圧を下げる効果があります。そう考えると、ビールのホップ香やウィスキーのスモーキーフレーバーには、リラックスできるのは、少し頷けますよね。
リラックスできる日本酒
上記では、GABAとGABA受容体が結合することで、リラックス効果を感じられることをご紹介しました。それでは、そのメカニズムから、日本酒の中で、リラックスできる種類の日本酒は何でしょうか?
そこで、面白い研究をご紹介します。2010年に日本醸造協会で発表された「GABAa受容体に対する日本酒成分の効果」という研究論文です。
この研究では、日本酒29点(純米酒8点、生酛純米酒4点、山廃純米酒5点、吟醸酒6点、普通酒6点)のGABA量を測定しました。ただ、研究対象としている日本酒の数が少ないので、もう少し、規模を大きくして欲しかったのですが。
その結果、吟醸酒と普通酒に比べて、純米酒に含まれるGABAが多く含まれる傾向があることがわかりました。また、純米酒でも、特に、生酛純米酒と山廃純米酒のGABA含有量が多かったということがわかりました。
これは、生酛造りや山廃造りの過程で、乳酸菌などの微生物が日本酒の成分である「グルタミン酸」からGABAを生成させたと考えることができるためとしています。このことから、「日本酒でリラックスしたい!」という場合は、「生酛純米酒」か「山廃純米酒」がおすすめです。
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将来の不安でいっぱいな時に飲みたい日本酒
成人になると、「就職活動が上手く行くか?」や「今後のキャリアアップどうしよう」などの将来の不安に悩むときが多いと思います。そんな不安な時に飲みたい日本酒をご紹介します。
次にご紹介する研究は、マウスを使用した実験です。その研究である「清酒飲用の抗不安作用ーマウスの高架式十字迷路試験による評価ー」では、げっ歯系のマウスやラットが開かれた高い場所を嫌い、不安を感じるという習性を利用して、「エタノール」・「普通酒」・「吟醸酒」を投与して、不安の水準を測定しました。
実験内容
→酒の投与30分前から実験終了後まで、絶食とした。
→「エタノール群」と「普通酒群」、「清酒(吟醸酒)群」、「生理食塩水(コントロール)群」に分類研究環境:12時間毎の明暗(明るい時間:0〜12時、暗い時間:12時〜0時)、室温:23℃(湿度:60%)高架式十字迷路:4本のアーム(2本は側壁がないオープンなもの、もう2本は高さが10cmの灰色不透明な側壁のあるクローズなもの)投与する量:エタノール、普通酒、吟醸酒の投与量は、エタノール換算1.2g/kg体重とする。
測定時間:10分間
測定指標:オープンアームとクローズアームの進入回数、滞在時間
→オープンアーム進入回数/各アームへの進入回数の合計(%)
→オープンアーム滞在時間/各アームへの滞在時間の合計(%)
※上記の2指標の数値が高い場合を抗不安作用が高いと判断する
実験結果
1.エタノールと普通酒の比較
生理食塩水の投与したコントロール群とエタノール群で、「オープンアーム進入回数」と「オープンアーム滞在時間」を比べたところ下記のような結果が出ました。
コントロール群に比べて、エタノールを投与した場合、「オープンアーム進入回数」は2.7倍となり、「オープンアーム滞在時間」は3.2倍となった。このことから、エタノールの投与での抗不安作用があるということがわかりました。
また、コントロール群に比べて、普通酒を投与した場合、「オープンアーム進入回数」は3.4倍となり、「オープンアーム滞在時間」は3.9倍となった。
エタノールを投与した場合よりも普通酒を投与した方が、抗不安作用が高い傾向にあることがわかった。
2.普通酒と吟醸酒
次に、先ほどの普通酒の結果と吟醸酒での結果を比較したところ、普通酒群に比べて、吟醸酒を投与した場合、「オープンアーム進入回数」は1.8倍となり、「オープンアーム滞在時間」は1.6倍となった。
このことから、普通酒より吟醸酒を摂取した方が、抗不安作用が高いということがわかりました。
3.吟醸香が抗不安作用を高める
吟醸香の成分として、「カプロン酸エチル」と「酢酸イソアミル」があります。それぞれの成分が抗不安作用にどのような影響があるのかを調べるため、カプロン酸エチル(10mg/l)と酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加して、エタノール換算1.2g/kg体重で経口投与し、十字迷路試験を実施しました。
カプロン酸エチルを添加した普通酒を投与したところ、普通酒に比べて、「オープンアーム進入回数」は1.5倍となり、「オープンアーム滞在時間」は1.5倍となった。同様に、酢酸イソアミルを添加した普通酒を投与して、普通酒と比べたところ、こちらも前者が1.4倍、後者が1.5倍となり、吟醸香の成分が抗不安作用に影響していることがわかった。
吟醸香がしっかりしている日本酒を選んでみてもいいかも!
まとめ
・不安を和らげたい時は、吟醸酒がおすすめ
ぜひ、リラックスしたい時や不安を和らげたい時に参考にしてみてください。
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